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第6波感染状況(~1/31/2022)と対策の検証 [コロナについて]

2022年1月末までの日本の感染状況を示します。1月19日に示した最悪の”2週後には10万人になる”という事態になっています。左の図の新規感染者数を再現すると、1月20日頃以後の増加率が小さくなります。この減少が、対策の効果であればよいのですが、おそらく検査あるいは登録2022-1-31japan.pngが追いついていないことによるものと思われます。それにしても、感染者数が少なかった10~12月の間に、何の対策も考えられていなかった事が残念です。厚生労働省の1月30日時点でPCR検査可能数は386328/日、31日の検査数は249977です。陽性者数はおよそ8万人ですから陽性率は30% 位で、かなり高くなっています。10万人を超える勢いの新規感染者により診療を受けられない患者が続出する医療崩壊が進行しており、緩和されたとはいえ濃厚接触者を検査せずに隔離する方針により、社会機能の停滞が起こっています。
 すでに破綻している政府の「クラスター対策」を今なお踏襲していることが、現在の混乱の原因です。日本は島国だから、「ウイルスを持って入国した人を隔離し、仮に感染した人が市中に出て発症すれば、その患者と“濃厚”接触した人を隔離して発症するのを待ち、発症した人を治療すれば感染のまん延を止められる」というのが厚生労働省の基本方針でした。しかし、「水際対策が徹底していなかったこと」、「無症状者が感染を広げることを無視し続けていること」、「PCR検査は、発症した人の診断にしか用いなかったこと」、「人と人の接触を減らす対策が飲食店に限られたこと」などから、クラスター対策は破綻しました。さらに、「検査の精度に問題がある」という世界でも聞いたことのない理由を持ち出して、この2年間PCR検査のキャパシティーを上げてこなかったこと、またオミクロン株で伝染のモードが変わったにもかかわらず同じ濃厚接触の定義を用いていることから、現在の感染爆発が起こっていると考えられます。現状を少しでも速く収束させるためには、すでに2年前に提案されていたことですが、検査のキャパシティーを上げ、陰性者だけで世の中を動かす以外に道はないでしょう。

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コロナに対する本末転倒の議論は看過できない [コロナについて]

全国の新規感染者数が5万人を超え、残念ながら数日前に行った最悪の予測の通り増加しています。そんな中、オミクロン株(変異体)に対応するとして分科会からあるいはその中の専門家と呼ばれている有志から出された提言には、本末転倒あるいは非科学的な方針や現在採られている対策と矛盾するものが多く、岸田首相や知事の方々もかなりとまどっておられるようです。科学的・論理的に考えて看過できないものを以下に指摘します。
[1] オミクロン株は感染力が強いから、「人流抑制」ではなく「人数制限」が大事だという尾身会長の発言は、すでに多くの自治体首長やメデイアが、批判しています。「人流」は外出した人から生じ、外出する人は大部分が公共交通機関を使います。一方、海外から帰国した人は、公共交通機関の利用を禁じられています。オミクロン株は空気伝染が主な伝染経路になっており、混み合った場所では伝染の可能性があるという事を認識すべきではないでしょうか。
[2]「あまり会っていない人と会わない」、「知っている人同士で4人以下の会食にする」という説明がありました。一方、家庭内感染が増えていますが、家族は「全てよく知っている人」であり、4人以下の家族では感染しないという証拠があるのでしょうか?家庭内感染は、ウイルスがそこで湧くわけではなく、外で感染した人が家庭に持ち帰るからであり、外で感染しないことが重要でしょう。ちなみに、厚生労働省では5人ほど以上の集団感染をクラスターと定義しており、「4人以下の会食であればクラスターは発生しないだろう」ということになります。また家庭内の感染はクラスターとは呼ばないと定義されています。
[3]「渋谷の繁華街で感染が広がっていますか?(起こっていないという意味で)」という発言もありました。感染伝播のおよそ半数は無症状者からのものであり、無症状者の行動を把握していなければ、そんな主張はできないでしょう。そもそも分科会は感染経路不明者の感染源をどう考えているのでしょうか?
[4]感染者数が増え、PCR検査が追いつかなくなっていることから、「若い人は重症化しないから検査しない」という提言が分科会有志からでました。最終提言からは除かれたようですが、2年前に言われていたように、分科会は、今なお「PCR検査は重症化しそうな感染者を見つけるため」と考えているようです。諸外国の例を引くまでもなく、検査は有症状、無症状を問わず感染者を見つけ出し、他人に伝染させないことを求めるための手段です。普通の科学者であれば、検査が足りなくなるなら「検査能力を高めることを求める提言」を政府に行うでしょう。濃厚接触者についても、数日間ごとに検査で感染していないことが確認できれば、隔離の必要はないと考えられます。
[5]多くの都道府県で重点措置が発せられ、飲食店の営業時間の短縮が求められています。コロナウイルスは「夜行性」ではなく、いつでも感染します。感染は人と人の接触で起こりますから、陰性証明(ワクチンパスポートではなく)によって店員と客両方の陰性を確認し、万が一のために客の密度を十分小さくする方が科学的に妥当な対策と言えるでしょう。
 発症した人を確実に見つけ出して隔離することはもちろん大切ですが、無症状の感染者をできるだけ多く見つけ出して自宅待機してもらう以外に収束させる方法はないと思います。無料のPCR検査場はかなり設置され、ウェブ上の地図でも見つけられるようになっている自治体が多いですが、長時間待たなくても良いように検査会場を増やすべきです。外出時も、高性能のマスクの確実な着用を求めることも重要です。

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コロナ第6波現状の分析と望まれる対策 [コロナについて]

コロナ第6波の感染は、これまでにない広がりを見せており、またウイルスの特徴がこれまでのものとは異なることから、これまで行われてきた「濃厚接触者」の定義や「行動自粛」の指針は見直す必要があるようです。
japan22-1-18.jpg 左の図は、昨日18日の新規感染者数まで含めた感染状況の分析です。平均的振る舞いを見ていますから、直近の解析には誤差が大きく出ます。1月6日の解析による1月最初の1週間の増加率は0.45となっていましたが、昨日までのデータを含めた解析では0.25程度であり、この1週間はさらに鈍化して0.15程度(倍加日数4.6日)です。しかし、この増加率はこれまでの波に比べると2倍以上大きく、このまま行けば、来週には6万人、再来週には10万人を超えることになります。この状況を見て、多くの人が行動を自粛されて、そこまで増加しないことを望みます。
 重症者が増えていないから問題ないという論調もありますが、これほどまで感染者が増えますと社会の機能が失われ、様々な面で大きな影響が出ます。対策の遅れの原因は、①病床逼迫度で感染状況を判断していること、②ワクチンが感染防御に役立っているという過信、③無症状感染者の数を見積もっていないこと、④検査体制や感染防御対策への対応が不十分であること にあります。①は、保健所が対応できて入院させられた感染者の数で決まっており、感染者急増期には感染状況を反映していません。入院を必要とする感染者(入院調整中の人)の数を含めて、病床逼迫度を定義すべきです。②については、報告される感染者の中でワクチン接種者の占める割合が、ワクチン接種率より少し小さいだけですから、ワクチンが感染する・感染させる事を防いでいるのは、接種後比較的短い期間と言わざるを得ません。③について、最近「感染者の中の感染経路不明者の割合」が余り報告されません。たまたま見た昨日のニュースでは、自治体ごとに異なっていて20%~70%くらいでした。この数値が大きいほど、市中の無症状感染者の数が多くなりますから、注視すべき指標ですが、分科会がなにも触れないのは不思議です。④厚生労働省のホームページによると、PCR検査は385181/日が可能らしいですが、すでに多くの自治体で感染者数が増えて検査が追いついていないということです。それにより、日毎の新規感染者数が小さくなりますから、感染が過小評価されることになります。接触自粛による感染防御も。今なお「会食は4人まで」というような基準が出てくるようでは、現状に対応できているとは言えないでしょう。
 コロナの最大の問題は、無症状感染者が感染を広めること、さらにオミクロン変異体は強い空気感染力をもつことです。有症状者を隔離し、投薬すれば、その感染者の重症化を防げますが、市中の感染者を減らせません。市中にいる無症状者は感染している自覚もないわけですから、薬(開発されたとして)を飲むこともなく、ただ感染を広げるだけになります。社会的機能を維持するためには、検査でできるだけ多くの無症状感染者を見つけ出し、陰性になるまで自宅で待機してもらう以外に方法はないでしょう。感染者の接触者についても、現在の濃厚接触者への対応ではなく、接触した全員を数日間監視し、陽性者のみ自宅待機にすれば良いでしょう。岸田首相が、「ワクチンパスポートを一時的に中止するが、PCR検査陰性証明は有効である」という発言をされましたが、それはワクチンが開発されていなかった2年前の春に何人かの専門家/テレビコメンテーターが言われていたことです。

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オミクロン変異体市中感染者数:テレビ朝日玉川徹氏の宿題への解答 [コロナについて]

1月11日のテレビ朝日モーニングショウで、玉川徹氏から「だれかオミクロン変異体の市中感染者数を見積もれないのか」という発言がありました。感染経路不明者の割合から、市中感染者数を見積もる理論的枠組みはすでに論文(現在査読中)で明らかにしており、2021-8-23のブログでも説明していますが、現在のオミクロン変異体については正確なデータがありませんので精度の高い推定は難しいです。大雑把な見積もりをするために、ニュースなどで聞く数値から推定して、隔離される日を基準にその3日前から感染力を持ち、その後5日間は感染力を持つという仮定をおきます。さらに2022-1-07のブログで示しましたように現在は感染者数が増加率=0.45で増加していることを考慮し、また無症状者の検査/隔離は積極的に行われていないものとします。これらの仮定を置くと、感染経路不明者数の割合が f のとき、市中の無症候感染者数は、日々陽性者数の3.84/(1-f) 倍で与えられます。つまり、f=0.3のとき5.5倍、f=0.5 のとき7.7倍、f=0.7のとき13倍になります。参考にして頂ければ幸いです。

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コロナ第6波突入、対策は?(データ修正1月10日) [コロナについて]

2022年に入って全国的にデルタ変異体、オミクロン変異体が広がり、その増加はこれまでにない驚くべき速さになっています。
Japan2022-1-06s.jpg左図(解析をやり直し、より正確な図にしました)は、日本のこの3ヶ月間の新規感染者数及び2020年4月以後の感染状況図(感染者数増加率を感染者数の関数として示した図=上半面が増加、下半面が減少を表す)です。感染状況図が示すように、感染者数の増加率がこれまでの4~5倍になっており、オミクロン変異体の感染力が強く、今後感染者数の急激な増加が危惧されます。感染者数が2倍になる倍加日数は、0.693を増減率で割った量ですから、増減率が図のように0.45の場合、倍加日数は1.5日(これまでの波では10~14日程度だった)になります。昨年来、ワクチン接種が進み、また経口の治療薬も認可されましたから、これまでの2年間とは違った状況にありますが、ワクチンを過信し、対策がおろそかになりますと、1日10万人以上の感染者がでることも予想されます。
 ワクチン効果については、すでに2021年9月1日のブログで説明しましたように①感染しない効果:予防率a1 ②感染しても他の人にうつさない効果:感染力抑止率a2 ③感染しても発症しない効果:発症抑止率a3  ④発症しても重症化しない効果:重症化抑止率a4 を考える必要があります。新規感染者数の増減率は、β×(1-x)×(1-a1)×(1-a2) ーq ーγ で決まります。βはウイルスの伝播係数でオミクロン変異体では大きくなっています。x は行動自粛率、qはPCR検査によって陽性者を見つけ出して隔離する効果で、γは自然治癒あるいは薬などによる市中感染者の治癒効果を表しています。すなわち、新規感染者数は、ワクチンの最初の二つの効果で決まり、よく耳にする後の二つの効果;発症予防と重症化予防は、入院者数や死者を減ずる効果しかなく、感染伝播を抑える効果ではありません。軽症でも感染者が増えますと、社会機能が麻痺することはイギリスやアメリカですでに見られています。ワクチンの予防・感染抑止効果の持続性に対する正確なデータは公表されていないようですが、接種後かなり速く減少するようで、感染者数を抑えるには、ワクチン頼みではなく、人と人との接触抑制および検査/隔離対策を徹底し、経口治療薬の開発を急ぐ事が重要です。また、ワクチンについても感染しない/させない効果を長期間保ち、かつ色々な変異体にも有効なワクチンの開発が望まれます。
 昨年秋までの1年半に比べ、岸田政権はかなり迅速な対応を目指していますが、対策が分科会が決めた「新規感染者数」と「医療体制の逼迫度」に基づいて考えられており、新規感染者数拡大を防ぐ対策としては後手になっています。上の感染状況図で言えば、左端の急激に上に上がっている線が、正の領域に入ったところが第6波への突入を表しますから、12月中旬に日毎感染者数が前週より増加した日が1週間以上続いた段階で、すなわち増加率が増加しだしているところで強い対策を出すべきでした。9日からの一部領域を対象とした「まん延防止等重点措置」の対策では、2~3週間遅れたと言わざるを得ません。

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オミクロン株 [コロナについて]

新しい変異株、オミクロン株が出現し、デルタ株で感染が広がっていたヨーロッパ諸国や感染が収まってきていた日本でも、コロナ対策が強化されました。数理モデルでコロナ対策を考える場合、感染伝播率と感染源除去率の大小関係のみが重要であり、前者が後者より小さくなる対策をとり続ければ、コロナは収束します。
感染伝播率=ウイルスの感染力×(1-接触自粛率)×(1-ワクチン効果)
感染源除去率=検査・隔離率+治癒率
と表せますので、感染力が増した場合は、これまで以上に自粛率を高める、有効なワクチンを接種するとともに、検査・隔離の充実と治療薬の早期の開発が必要になります。必要な対策は昨年春の第1波の時から変わっていませんので、新首相が全てにおいて迅速な対応をしてくれることを望みます。

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緊急提言「日本グリーンゾーン化戦略」 [コロナについて]

私の知人らが中心となってコロナに対する「日本グリーンゾーン化戦略」の緊急提言が行われます。内容は私の提言とほぼ同じです。下記のサイトで賛同者が募られています。
また、記者会見がオンラインで27日13:00に行われる予定だそうです。
以下で見えるはずです。
=>ビデオ公開になりました。ビデオは、 で配信されています。

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宣言解除の条件ー第6波を起こさないために [コロナについて]

主要な都市圏をもつ都道府県の緊急事態宣言が延長される中で、政府は宣言中でも行動制限をある程度緩和することを議論し始めました。コロナの実相を完全に理解しているとは思えない政府が立てる選挙目当ての対策は、注視する必要があります。この1年9か月の経験から、コロナは「発症前の感染者、発症しない無症状者 が感染力を持つ」ということがわかってきました。したがって、無症状の感染者を見つけて隔離することが第1の蔓延防止のための対策であり、世界の常識になっています。実際、それを実践している国がコロナを収束させており、それが「ゼロコロナ」と言われている状態ですが、「ウイズコロナ」というのも、どれだけ日々の感染者を許すかに違いがあるだけで、基本は変わらないはずです(時折出てくる重症者だけ対応するウイズコロナ政策は、議論の対象にもなりません)。 経口の治療薬が開発されるまでは、感染している人を確実に隔離して、かつ日々の陽性者数を各都道府県でコントロールできる範囲に抑える必要があります。分科会がよく尺度として挙げる10万人あたり何人という数字ではなく、論理的に考えればすぐわかる指標を考えるべきです。当たり前のことですが、各都道府県で、
  現有普通コロナ用ベッド数 > 日々陽性者数×中等症になる割合×平均入院日数
  現有重症者コロナ用ベッド数 > 日々陽性者数×重症になる割合×平均入院日数
を満たす必要があります。左辺のベッド数は、医師・看護士が対応できる数であり、さらに右辺には3~5割のリスクヘッジを含める必要があります。これより、各都道府県で許容できる日々陽性者数が算出できますから、それ以下に抑えるための対策が必要になります。 政府の対策は、右辺の感染者数の増加・減少は人流抑制だけに頼り、増加に備えて、左辺のベッド数を増やすことを求めています。ベッドを増やしても、医師・看護師が足らず、入院調整中の患者や自宅で亡くなる人が増えて、医療崩壊しました。すべての市民に行動自粛を求めるのではなく、陽性者を自宅・ホテル・病院に隔離して、陰性者だけが外に出るようにすれば、感染の拡大はほとんどなくなり、感染者数を極力減らせます。ワクチンの「感染しない・感染させない効果」が100%保証されれば、ワクチン接種者は自由に行動できますが、今のところ発症あるいは重症化予防の効果しか期待されておらず、その効果も現状では揺らいでおり、ワクチンパスポートは感染を広げる危険性すらあります。
 社会を機能させるためには、無料で各人週1回(外出しない人は少なくても良い)のPCR検査を行い、陽性者は自宅あるいはホテル・病院で隔離し、陰性者が次の1週間は自由に行動できることにすればよく、それこそ「ウイズコロナ」になると思います。 万が一のためにマスクなどの感染対策は必要でしょうが、市中の無症状感染者を極力減らせば、実質的には行動自粛はほぼ必要なくなります。また、陽性者に確実に自宅あるいはホテルなどで待機してもらうために、休業補償と生活支援を行うことも重要です。陽性者が市中を動き回ることをなくせば、新規感染者はそれほど多くなることはありませんから、市民生活が取り戻せるでしょう。行動自粛とワクチン一辺倒の政策から、すでに昨年春から一部専門家などが言われていたように、検査+隔離政策を今こそ取り入れるべきでしょう。

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日本のコロナ対策は何故破綻したか [コロナについて]

日本のコロナ感染の第5波が、ピークを越え、感染者数が減少しつつあるように見えますが、現在のやり方だと感染者数が多くなると検査が追い付かず、無症状者をたくさん見逃すことになりますから、再拡大の危険性はぬぐい切れません。病気になった人はいつでも治療を受けられるように設計されていたはずの国民皆保険ですが、病院に入れず自宅に放置されたままで亡くなる方も増えており、コロナ対策は破綻し、医療体制が崩壊していると言わざるを得ません。昨年の春以来の政府の対応やメディアから発信される情報、ネット上にあふれる情報をみていると、その破綻の原因が見えてきます。
1.首相はじめ内閣中枢の科学リテラシー、解析力、論理的思考力の欠如: 端的な例が、7月に首相が「重症者の中の高齢者の割合が減っているからワクチンの効果が出ている」と色を成して記者会見で説明したことです。もともと、高齢者が重症化しやすく、高齢者の「重症者数を減らす」という政策だったはずです。その成果が出ているとして掲げたのが、「感染者の中の高齢重症者の割合が減っている」ということでした。この割合は、老齢の重症者数/全感染者数 ですから、この比が小さくなっても、必ずしも分子が小さくなったわけではありません。実際、第5波では分母が大きくなったからこの比が減っていたわけであり、菅首相、そしてそういう説明をした政府中枢の人が比の意味を理解していないことがはっきり示されました。メディアによくでる有名大学教授や専門家にも割合の意味が分かっていない人がおられます。コロナ感染状況を表すのに、様々な割合が用いられますが、その意味が理解できていないなら正しい対策は立てられないでしょう。
2.検査抑制派の偽情報に、政治家だけでなくメディア、市民もだまされた:昔から感染症対策の基本は、感染者と健常者を分離することでした。そのためにます感染者を隔離することが行われ、それでも収まらないときは人と人の接触を断つロックダウンが行われました。従来の感染症とは異なり、コロナ感染者は発症前(2日ほど)にも感染力を持ち、さらにまったく発症しない無症状者も感染力を持っています。したがって、発症者だけを手当てしても、感染は収まらないことになります。発症者だけに対策をすればよいのであれば、発症者がコロナかどうかの確認のための検査をするだけでよいでしょう。しかし、無症候の患者が感染させることを止めるためには、無症状者でも感染の可能性のある人を検査で見つけ出し、自己隔離をしてもらう必要があります。日本では1人の感染者を見つけ出すのに行われる検査数は5人から20人程度です。ニュージーランドや台湾など、収束させている国では、1人の陽性者を見つけるのに100人以上(数100人)の検査が行われています。オリンピック、パラリンピックでは、検査の有効性(PCRでなく抗原検査でも)に基づいた対策が採られました。一般の市民に対して同じ対策を採らない限り、収束はどんどん遅くなります。
3.ワクチン効果の過信:昨年の早い時期からワクチンがコロナ対策の切り札と政府が主張してきたにもかかわらず、ワクチンの確保、接種体制の構築が遅れていたために、大きな混乱を引き起こしています。今のコロナ感染症のウイルスは、2.で述べたような特徴を持ち、ワクチンの効果はそれらに対応する次の尺度で測る必要があり、さらにそれぞれの効果がどれだけ持続するかを見る必要があります(長期的影響が不明であることはここでは触れません)。
①予防率(感染しない効果)
②感染力抑止率(感染しても他の人にうつさない効果)
③発症抑止率(感染しても発症しない効果)
④重症化抑止率(発症しても重症化しない効果) 
現時点で政府は、重症化予防効果があると言う説明しかせず、他の効果についてはデータがほぼないのか全く言及がありません。コロナ感染を収束させるには、②の感染力抑止効果が最も重要ですが、そのデータがなければワクチンが感染を収束させるとは言えないのは当然です。そのデータ・情報があるなら専門家は公にすべきです。③,④の発症抑止と重症化抑止にしか効果がないなら、無症状感染者を作るのと同じ事になりますから、ワクチンパスポートの意味がなくなり、コロナ対策を根底から考え直す必要が生じます。
4.忖度研究者の暗躍:メディアに頻繁に出るようになった研究者のなかに、フェイクニュース対策がコロナ対策では必要だと主張しながら、政府の方針に沿ったフェイクニュースを流すグループが見られます。政府から支援を得ている御用学者のほかに、将来の利益を見越して政府や企業に忖度する意見をSNSなどを駆使して大量に発信し、世論を操ろうとしている忖度研究者が、政府の科学的根拠に基づく正しい判断を妨げているように見えます。このグループは、NHKや朝日新聞など大手メディアで取り上げられ、厚生労働省HPのQ&Aの解答を書いていたり、政府の対策を支援する意見ばかり発信していますので、政府がそのグループを支援していることを疑わせます。
5.人材育成を怠り、床依頼しかしない政策:感染者数が増えると、「ベッドの確保」が強く求められていましたが、ベッドがあっても医師、看護師がいなくて、ベッドを埋められない状態の町があります。挙句に、東京都知事は「自宅を病院と考えている」、菅首相は「自宅療養者すべてに連絡をとれるようにする」という極めて効率の悪い弥縫策のような対策を唱えています。医療体制の最も大切なことは、医療関係人材と医療機器の確保であるはずで、それを効率よく運用できる集中した臨時の医療施設が必要なことは昨年の春から分かっていたことです。「ベッドを増せば金を出す」という愚策ではなく、国が主導して臨時医療施設を開設し、開業医の人に週1日でも出ていただくような体制を構築できれば、医療体制のかなりの強化になるでしょう。
6.メディアの科学的思考力の低下:メデイアから発せられる情報に、多くの似非科学が含まれています。新聞/テレビの科学部記者の科学リテラシーの低下は、目を覆いたくなるだけでなく、市民の立場から言えば許しがたいものです。またメディアへの露出度で研究者が評価されるようになっており、科学研究そのものがゆがめられています。
 科学を理解し、論理的・合理的思考の出来る人が政権を担当され、メディアの科学力の向上を望みます。
 ついでに、東京都と日本の、9月2日までの感染状況を示しておきます。最近は減少傾向に見えますが、検査が十分にやられていず無症状感染者が野放しですので、今後の再拡大が懸念されます。

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市中感染者は日々陽性者数の10倍!!分科会は大丈夫か? [コロナについて]

先日、分科会尾身会長から、「市中感染者数は日毎の陽性者数よりやや多いと思われる」という曖昧な発言がありましたが、知っていて隠しているのか、知るすべをもたないのか、大変不思議に思いました。コロナが日本に入ってきてから20ヶ月が経過し、日本や世界のデータから多くの知識が蓄積されています。これらの情報から、科学的・論理的思考というほどのこともなく、単純な割合の意味を利用して、様々な推定が行えます。
 コロナの感染者で発症する人の割合(x)は、~75%ということが分かっています。ある日に陽性者数がNであれば、その人達と同じ日に感染した人の総数(ここでは揺らぎを無視します)はN/x=(4/3)N, つまり陽性者数の1.33倍であり、その内無症状の人は((1-x)/x)N=(1/3)N だけいることになります。この人たち以外に市中には、それまでに感染して、無症状のままでなお感染させている人がいます。感染力が無くなるまでの期間(d1)の間の人は、N が余り変わらなかったとすると、d1*((1-x)/x)*N だけいることになります。この期間は、5~7日でしょうから、少ない方を用いると(5/3)N になります。さらに市中には、検査/隔離される前のある期間(d0) の間の感染力を持つ感染者がいます。その数はおよそd0*(4/3)*N と推定できます。この期間は3~7日程度でしょうから、小さい方を用いると、4N になります。両者を合わせると、4N+(5/3)N=(17/3)N~5.7N になります。d0, d1 として、長い方を用いると、その数は(35/3)N~11.7N となります。つまり、日々発表される陽性者数の6倍から12倍の感染力をもつ感染者が市中にいることになります。陽性者数が増加傾向にあるときや減少傾向にあるときは、少し値は変わりますが、やはり陽性者数の10倍前後の感染力を持つ市中感染者がいると考えてよいでしょう。この値は、昨年5月に発表した論文で示した推定値と一致しています。
 この考え方は、

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