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「物理ゲーム館」が福岡市進出 [物理ゲーム館]

『物理ゲーム館」が福岡市に進出します。「物理ゲーム館」は、「おやっと思う ような不思議な現象を体験させ、それを用いたゲームで遊ぶなかで物理に親しみ、理科離れをなくす取り組み」で、東京電機大学に在職していたときに始め、その後も京都で体験授業として行っています。今回は、私も所属していますサイエンス福岡クラブの主催の「2023年秋のセミナー」として、「”反重力”折り紙をとばそう」を福岡市科学館の実験室で行います。落とせば ひらひら舞い落ちるだけの紙を少し折って、落としたら前 に飛ぶようにしたものをつくります。原理を説明した後、 飛ぶ距離を競うゲームを行います。11月4,5日の午前午後に4回開催され、4回とも代表が講師を務めます。
参加には福岡市科学館のホームページ
https://www.fukuokacity-kagakukan.jp/activity/2023/09/hp.html
から申し込み(期間:10月1日~15日、多数の場合:抽選)が必要です。


#国際卓越研究大学 と大学改革 [オピニオン]

「教育は国家100年の計」であり、大学・大学院は国の将来を担う人材を育てる場として、国民に直接責任を負う教育機関であるが、今大学は大きな分岐点にいると思われる。 1990年代から政府・文部科学省は、大学院の重点化や国立大学の法人化を含め様々な取り組みを行ってきた。その一連の施策の最後を飾るがごとき大型の事業が「#国際卓越研究大学 」認定制度であり、その最初の候補大学として東北大学が選定された。政府出資金約1.1兆円、財政融資資金からの借入金約8.9兆円の合計10兆円のファンドの運用益(年間3000億円以上を想定)を、数校の大学に配分するという計画である。選定された大学は、最大25年の間毎年数100億円程度の資金を得て、世界トップレベルの研究水準を目指すことが求められる。ちなみに、22年度前半期は1881億円(▲3.67%)の赤字だそうで、将来にわたって想定されている年4.49%以上の運用とはかけ離れた結果になっている。また、参画大学は研究成果を活用して年3%の事業成長が求められ、42年度からは借入金の償還義務が生じることになっている。運用次第という資金では、長期的展望に立った大学の運営は不可能であり、今後大学がどうなるか大変危惧されるところである。
 この制度は、アメリカやイギリスの私立大学が巨額の独自資金の運用益で教育・研究を充実さしていることから、巨額なファンドがあれば、大学の研究・教育力が向上するとして創出された。しかし、それはまさしく本末転倒であり、優れた教育・研究機関だから資金が集まっているのであり、多額の金をつぎ込んでもよい研究ができるわけではないことはこれまでの取り組みからも明らかであろう。研究者が自由な発想に基づいて行う研究に対して支給されている科学研究費は、2022年度は新規と継続分を合わせて81,031件146,996,123(千円)であり、上記の数大学に対する巨額な資金提供は、日本全体の研究環境を大きく歪ませることになろう。特に巨額な研究資金が研究不正の温床になってきたことを忘れてはならない。また、参画大学は、外部の人を中心とする合議体制によるガバナンスが求められているが、そのような協議によってよい研究が生まれ、教育の質が向上するとは思えない。
 政府・文科省は、2004年の国立大学法人化の2年前から次々とCOE(21世紀COE)、GCOE(グローバルCOE),WPI(世界トップレベル研究拠点)、WISE(卓越大学院)など研究拠点形成のための大型の競争的資金や、FIRST(最先端研究開発支援)やImPACT(革新的研究開発推進)などの特定の研究課題を支援する競争的資金を導入してきた。予算規模はプログラムによって異なるが、数100億円から1700億円である。これらの大型競争的資金以外に、優れた教育改革の取組を支援する様々なプログラム(Good Practice(GP))が競争的資金として実施されている。これらの競争的資金は、主に従来の運営費交付金(法人化以前は校費)を毎年減額して手当されており、競争的資金を獲得できなかった大学の運営は大変厳しくなっている。国民は、その能力に応じて等しく教育を受ける権利があるが、数校の大学で大学生全員を教育することはできないのは自明であり、教育費の競争的資金化は平等な教育を受ける権利を損なっている。
 この20年余りの間に行われたさまざまな取り組みにもかかわらず、大学院博士課程への進学者数は減り続けており、研究力の凋落は甚だしい。その根本原因は、博士課程を出た若手研究者が安定した身分で、自由に研究できる環境が損なわれてきたからに他なず、大学・大学院の教育研究を支援すべく導入されてきた競争的資金がその根本原因になっているのは極めて皮肉なことである。
 最後に指摘しなければならないのは、メディアは取り上げないが、競争的資金の応募書類の作成に教員・事務職員の莫大な労力が使われていることである。採択されればその労も少しはねぎらわれるであろうが、採択されなかった大学で費やされた労力はほとんどが無駄になり、教員の研究時間をそいだだけの結果になる。競争的資金の採択率は20%から30%だから、後者の方が圧倒的に多いことは憂慮すべき事実である。