改めて原発処理水の海洋放出に反対する [オピニオン]
政府は今夏にも原発処理水の海洋放出を始めようとしている。この問題についてはすでに2022-08-10のブログで反対しているが、改めて反対の意見を表明する。
放射性物質の生態系に及ぼす影響は、「科学的に定義できる問題であるが、科学では答えられない問題」であり、ワインバーグが定義したトランスサイエンスの問題である。岸田首相は、「科学的根拠に基づいて丁寧に説明する」というが、科学的に答えられない問題に科学的根拠を与えることはできない。よりどころとするのは、国際原子力機関(IAEA)の報告書であるが、「処理水の放出は日本政府による決定であり、この報告書はその方針を推奨するものでも、支持するものでもない」と強調しており、科学的根拠に基づく「お墨付き」を与えるものではなく、海洋放出計画が「国際基準に合致している」ことを示したにすぎない。「国際基準」は、海洋放出物質の濃度に対する基準であるが、地球環境に対する長期的な影響を考慮する場合は、放出される物質の総量が重要である。分かっていることは、何十億年にわたる地球環境の微小な変化が生命の進化をもたらし、現在の地球環境ができていることである。
人間の「科学的」と称する営為によって地球環境を破壊することは、地球上の全生命体に対する冒とくである。放出された放射性物質は、日本近海にとどまるわけではなく、世界中に拡散され、その影響を予測することは不可能である。これは風評ではなく、「安全であると科学では証明できない」という科学的事実である。「他の国が放出しているので日本も放出してもよい」のではなく、他の国に放射性物質の海洋投棄を止めさせるべきであろう。
2023-07-05 15:49