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専門店の専門書の分類はどうなっているの? [雑感]

DSCN9533.JPG 先日福岡市の中心部に出かけ、久しぶりに大規模書店に立ち寄りました。専門書も揃えている大きな書店で、わたくし自身の書いたあるいは訳した本も何冊か書棚に配架されています。しかし、最近の「社会物理学」(共立出版)、「つながりの物理学」(裳華房)や少し前の訳本「パーコレーションの基本原理」(吉岡書店)が、物理学ではなく数学の棚の並びの「カオス・複雑系」の棚に配架されているのを見て驚きました。これらの本で扱っているのは、少なくともカオスではなく、従来考えられている複雑系とは異なった学問分野です。従来の物理学の概念では理解できない自然現象や社会現象でみられる普遍的性質を、統一的(物理的)に理解するための新しい物理的概念・手法を確立する学問分野ですから、物理学の領域に新しく棚を設けてほしいものです。
 出版社の方によれば、どこに配架するかは書店次第だということです。科学研究費の研究分野の見直しも、時代と遅れてしか行われませんが、書店における学問分野の枠組みはさらに遅れていると感じました。

改めて原発処理水の海洋放出に反対する [オピニオン]

政府は今夏にも原発処理水の海洋放出を始めようとしている。この問題についてはすでに2022-08-10のブログで反対しているが、改めて反対の意見を表明する。
 放射性物質の生態系に及ぼす影響は、「科学的に定義できる問題であるが、科学では答えられない問題」であり、ワインバーグが定義したトランスサイエンスの問題である。岸田首相は、「科学的根拠に基づいて丁寧に説明する」というが、科学的に答えられない問題に科学的根拠を与えることはできない。よりどころとするのは、国際原子力機関(IAEA)の報告書であるが、「処理水の放出は日本政府による決定であり、この報告書はその方針を推奨するものでも、支持するものでもない」と強調しており、科学的根拠に基づく「お墨付き」を与えるものではなく、海洋放出計画が「国際基準に合致している」ことを示したにすぎない。「国際基準」は、海洋放出物質の濃度に対する基準であるが、地球環境に対する長期的な影響を考慮する場合は、放出される物質の総量が重要である。分かっていることは、何十億年にわたる地球環境の微小な変化が生命の進化をもたらし、現在の地球環境ができていることである。
 人間の「科学的」と称する営為によって地球環境を破壊することは、地球上の全生命体に対する冒とくである。放出された放射性物質は、日本近海にとどまるわけではなく、世界中に拡散され、その影響を予測することは不可能である。これは風評ではなく、「安全であると科学では証明できない」という科学的事実である。「他の国が放出しているので日本も放出してもよい」のではなく、他の国に放射性物質の海洋投棄を止めさせるべきであろう。