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日本のコロナ対策は何故破綻したか [コロナについて]

日本のコロナ感染の第5波が、ピークを越え、感染者数が減少しつつあるように見えますが、現在のやり方だと感染者数が多くなると検査が追い付かず、無症状者をたくさん見逃すことになりますから、再拡大の危険性はぬぐい切れません。病気になった人はいつでも治療を受けられるように設計されていたはずの国民皆保険ですが、病院に入れず自宅に放置されたままで亡くなる方も増えており、コロナ対策は破綻し、医療体制が崩壊していると言わざるを得ません。昨年の春以来の政府の対応やメディアから発信される情報、ネット上にあふれる情報をみていると、その破綻の原因が見えてきます。
1.首相はじめ内閣中枢の科学リテラシー、解析力、論理的思考力の欠如: 端的な例が、7月に首相が「重症者の中の高齢者の割合が減っているからワクチンの効果が出ている」と色を成して記者会見で説明したことです。もともと、高齢者が重症化しやすく、高齢者の「重症者数を減らす」という政策だったはずです。その成果が出ているとして掲げたのが、「感染者の中の高齢重症者の割合が減っている」ということでした。この割合は、老齢の重症者数/全感染者数 ですから、この比が小さくなっても、必ずしも分子が小さくなったわけではありません。実際、第5波では分母が大きくなったからこの比が減っていたわけであり、菅首相、そしてそういう説明をした政府中枢の人が比の意味を理解していないことがはっきり示されました。メディアによくでる有名大学教授や専門家にも割合の意味が分かっていない人がおられます。コロナ感染状況を表すのに、様々な割合が用いられますが、その意味が理解できていないなら正しい対策は立てられないでしょう。
2.検査抑制派の偽情報に、政治家だけでなくメディア、市民もだまされた:昔から感染症対策の基本は、感染者と健常者を分離することでした。そのためにます感染者を隔離することが行われ、それでも収まらないときは人と人の接触を断つロックダウンが行われました。従来の感染症とは異なり、コロナ感染者は発症前(2日ほど)にも感染力を持ち、さらにまったく発症しない無症状者も感染力を持っています。したがって、発症者だけを手当てしても、感染は収まらないことになります。発症者だけに対策をすればよいのであれば、発症者がコロナかどうかの確認のための検査をするだけでよいでしょう。しかし、無症候の患者が感染させることを止めるためには、無症状者でも感染の可能性のある人を検査で見つけ出し、自己隔離をしてもらう必要があります。日本では1人の感染者を見つけ出すのに行われる検査数は5人から20人程度です。ニュージーランドや台湾など、収束させている国では、1人の陽性者を見つけるのに100人以上(数100人)の検査が行われています。オリンピック、パラリンピックでは、検査の有効性(PCRでなく抗原検査でも)に基づいた対策が採られました。一般の市民に対して同じ対策を採らない限り、収束はどんどん遅くなります。
3.ワクチン効果の過信:昨年の早い時期からワクチンがコロナ対策の切り札と政府が主張してきたにもかかわらず、ワクチンの確保、接種体制の構築が遅れていたために、大きな混乱を引き起こしています。今のコロナ感染症のウイルスは、2.で述べたような特徴を持ち、ワクチンの効果はそれらに対応する次の尺度で測る必要があり、さらにそれぞれの効果がどれだけ持続するかを見る必要があります(長期的影響が不明であることはここでは触れません)。
①予防率(感染しない効果)
②感染力抑止率(感染しても他の人にうつさない効果)
③発症抑止率(感染しても発症しない効果)
④重症化抑止率(発症しても重症化しない効果) 
現時点で政府は、重症化予防効果があると言う説明しかせず、他の効果についてはデータがほぼないのか全く言及がありません。コロナ感染を収束させるには、②の感染力抑止効果が最も重要ですが、そのデータがなければワクチンが感染を収束させるとは言えないのは当然です。そのデータ・情報があるなら専門家は公にすべきです。③,④の発症抑止と重症化抑止にしか効果がないなら、無症状感染者を作るのと同じ事になりますから、ワクチンパスポートの意味がなくなり、コロナ対策を根底から考え直す必要が生じます。
4.忖度研究者の暗躍:メディアに頻繁に出るようになった研究者のなかに、フェイクニュース対策がコロナ対策では必要だと主張しながら、政府の方針に沿ったフェイクニュースを流すグループが見られます。政府から支援を得ている御用学者のほかに、将来の利益を見越して政府や企業に忖度する意見をSNSなどを駆使して大量に発信し、世論を操ろうとしている忖度研究者が、政府の科学的根拠に基づく正しい判断を妨げているように見えます。このグループは、NHKや朝日新聞など大手メディアで取り上げられ、厚生労働省HPのQ&Aの解答を書いていたり、政府の対策を支援する意見ばかり発信していますので、政府がそのグループを支援していることを疑わせます。
5.人材育成を怠り、床依頼しかしない政策:感染者数が増えると、「ベッドの確保」が強く求められていましたが、ベッドがあっても医師、看護師がいなくて、ベッドを埋められない状態の町があります。挙句に、東京都知事は「自宅を病院と考えている」、菅首相は「自宅療養者すべてに連絡をとれるようにする」という極めて効率の悪い弥縫策のような対策を唱えています。医療体制の最も大切なことは、医療関係人材と医療機器の確保であるはずで、それを効率よく運用できる集中した臨時の医療施設が必要なことは昨年の春から分かっていたことです。「ベッドを増せば金を出す」という愚策ではなく、国が主導して臨時医療施設を開設し、開業医の人に週1日でも出ていただくような体制を構築できれば、医療体制のかなりの強化になるでしょう。
6.メディアの科学的思考力の低下:メデイアから発せられる情報に、多くの似非科学が含まれています。新聞/テレビの科学部記者の科学リテラシーの低下は、目を覆いたくなるだけでなく、市民の立場から言えば許しがたいものです。またメディアへの露出度で研究者が評価されるようになっており、科学研究そのものがゆがめられています。
 科学を理解し、論理的・合理的思考の出来る人が政権を担当され、メディアの科学力の向上を望みます。
 ついでに、東京都と日本の、9月2日までの感染状況を示しておきます。最近は減少傾向に見えますが、検査が十分にやられていず無症状感染者が野放しですので、今後の再拡大が懸念されます。

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