SSブログ

正道の感染対策が求められている(4月5日追記) [コロナについて]

日本の感染症対策は筋違いであり、正道を外れた間違った軌道上をぐるぐると回っている感じがする。下の図(TO:Physica A 573, 1 July, 2021, 125925より)は、感染者数の増減率を、新規感染者数の関数として模式的に表したものと対応する感染曲線である。上段左図は日本で昨年来行われてきた対策で、感染者数がある程度増えると、外出自粛とレストランの開店時間短縮で増減率が負となるようにし、ある程度新規感染者数が減ると対策を緩めて、増減率が正になるのを傍観することが繰り返されている。このとき感染曲線は、上段右図に示すように感染曲線は波打つ。この軌道をいくらl繰り返しても、感染は収束することはない。
Worst.jpg     Wave.jpg
収束させている多くの国では、上図の下段左に示すような対策が採られている。すなわち、新規感染者数がゼロになるくらいまで、徹底したPCR検査により、無症状感染者が隔離されている。1人の陽性者を見つけるのに行われた検査数は、日本の数10倍~100倍位である。このとき、下段右図に示すように感染は収束する。
PCR検査は、コロナ禍において通常の社会活動を行うための、健康診断ということができよう。現在、普通の健康診断は1年に1度求められるだけだが、コロナ禍についてはさらに頻繁な検査が求められている。職場や、学校あるいはサービス業の職員は、週2回程度、感染者と接触した可能性のある人は随時、検査を受けられる体制が必要である。例えばハーバード大学では、住居がキャンパス内か外か、また出席の頻度によって、週に1~3回の検査を受けることが義務づけられており、キャンパス内でPCR検査が受けられる。また、マサチューセッツ州の住人は、住居近くの検査場で、必要に応じていつでも検査を受けることができる。このような仕組みと基準を作るのは政府と自治体の責任である。政府の出す対策の中心は時短要請だが、その効果が限定的であるのは、すでに経験してきたところである。今こそ、収束させている諸外国の対策を参考に、上図下段に示すような正道に乗った対策が必要である。

nice!(0) 

波状感染曲線の自己組織化を示した論文が公開 [研究]

Physica A に掲載決定していた論文”Self-organization of oscillation in an epidemic model for COVID-19” (Physic A 573, 1 July, 2021, 125925)が公開されました。以下のリンクから5月12日までは、どなたでも自由にダウンロードできます。
https://authors.elsevier.com/a/1cnic1M2-2Aidv
採録している情報サイト
Semantic Scholar

nice!(0) 

3月18日までの感染曲線 [コロナについて]

3月19日0:0に厚生労働省が公開した日本の新規感染者数のデータの簡易法によるフィッティングと感染状況図を示します。3月の第1週頃から増加傾向にあり、この2週間ほどの曲線を滑らかに延長すると4月10日に新規感染者はおよそ5000人となります。右の感染状況図の軌跡は、下半面から上半面に3度目の移動をしており、明らかに第4波に入っていることを示しています。言うまでもなく、今後どのようになるかは、政府・自治体の具体的な対策と人々の行動にかかっています。
21-3-18blogs.jpg

nice!(0) 

COVID-19に関する政府の現状認識の疑問点 [コロナについて]

政府は、現在発出されている首都圏の緊急事態宣言を、期間最終日の3月21日に解除することを決めました。そもそもその宣言の下での対策が、レストランなどの時短要請だけだったので実質的影響は少ないでしょうが、人々の緊張感を緩める効果は見逃せないでしょう。同時に決定された総合的対策の5つの柱は、現在の感染者数を減らす努力ではなく、ワクチン頼みの施策としか言えず、第3波より大きな第4波を想定しているようにも見えます。各柱の問題点について、これまでの日本や世界の感染状況の分析から得られた知見に基づいて考えてみます。
飲食を通じた感染防止:飲食の場での感染が多いことは事実ですが、時短効果は限定的でしょう。むしろ、テーブル数を減らす、あるいは欧米のようにテーブルを道路に出すなど、客同士の距離を十分取ることと、さらに重要なのは、従業員全員が陰性であることを定期的に確認することだと思います。また、これらの対策は、朝も昼もやられるべきでしょう。
変異したウイルスの監視体制の強化:現在の5~10%の検査が、モニタリングのためのものならば、感染者数としては実数の10~20倍となる推定数を発表するべきでしょう。変異株への感染を本当にコントロールしたいのであれば100% の検査が必要なはずで、検査数を制限すれば昨年春のPCR 検査を抑えて失敗したのと同じ道を辿ることになります。
感染拡大の予兆をつかむための戦略的な検査の実施:無症状者のPCR検査は意味が無いと言っていたこれまでの考え方を変更したのであれば評価できますが、「感染源」を特定するためのモニタリング検査という考え方は、これだけ市中感染者が広がっている現状では、ほとんど役に立たないでしょう。アメリカの多くの大学で昨年夏頃から行われている(無料)ように、「無症状感染者を見つけて隔離するために検査をやる」と言う考え方を何故採用しないのか不思議です。収束させている国では、1人の陽性者を見つけるのに、1000人近い検査をやっているところもあり、そのような国を参考にすべきでしょう。
安全で迅速なワクチン接種、▽次の感染拡大に備えた医療体制の強化:これらは、昨年から言われてきたことで、今更なんで?という感覚をお持ちの方も多いでしょう。しかし、しっかりした医療体制は必要ですが、その前に、単に「なんとしても収束させる」という決意表明だけでなく、具体的に感染者を増やさない取り組みをやるべきです。
政府や分科会から出てくる説明を聞いていると、どこかにウイルスの発生源、「屋形船」「夜の街」「接待を伴う飲食」「会食」最近は「昼カラオケ」があり、そこを抑えれば感染防止になるという考え方に見えます。ウイルスは、知らずにその場所に持ち込む人から広がるのであり、市中を動き回っているその感染者を隔離しない限り、収束させることはできないでしょう。また、過去7日間の平均で政策が判断されることが多いようですが、増加期も減少期も変化は常に数日遅れることになるので、対策が後手に回ることになります。

nice!(0) 

アメリカ物理学会開催 [学会]

アメリカ物理学会の2021 March Meeting が日本時間の昨夜から始まりました。今年は完全にオンライン開催で、将来の会議の方向性を示すものになりそうです。参加者は11000人以上、発表は10000件以上だそうです。昨夜3,4の講演を聴きました。実際の会場で見るのより近くの画面上で見られますから、講演内容はよく分かるのですが、質問はメッセージを座長が読み上げる形で行われ、臨場感が乏しく感じました。数10個のパラレルセッションがありますが、画面を変えるだけで見られる点は、便利です。通常の会議のように、人が集まれる場所が用意されており、”セカンドライフ”のようなイメージで、交流できそうです。ポスターは、すでに公開されていますが、ポスターセッションの時間帯には、ライブチャットが出来るみたいです。ただ、こちらにとっては、早朝1:15~3:15ですから、起きていられるか・・・
 APS villageの入り口とアバターの画面です。

nice!(0) 

「社会物理学」研究集会 [学会]

統計数理研究所共同研究集会「社会物理学の新展開」が、2021年3月27日にオンライン(Zoom)で開催されます。私のグループから3件のコロナ関係の発表を行う予定です。現時点でのプログラムが公開されています。
また、下記サイトで事前登録していただくと、
集会のurl などの情報が後日送られてきます。ご興味をお持ちの方は是非「ご来場」下さい。

nice!(0) 

コロナに関する論文が掲載決定 [コロナについて]

Physica A に投稿していた論文”Self-organization of oscillation in an epidemic model for COVID-19”(コロナに関する英語論文第5報です)が掲載決定になりました。この論文では、感染者数が増えてくると対策を強化し、ある程度減ったら対策を緩めるという政策の場合、波打った感染曲線(感染者数の時間依存性)になることを厳密に示しました。また、感染を収束させるためには、感染状況をコントロールできる「ゼロコロナ」が必要なことを示しました。共同研究者の須田氏の詳細な解析によると、収束させることに成功しているオーストラリア、シンガポール、タイ、台湾、ニュージーランド、ベトナムの6ヶ国では、陽性者1人を見つけ出すために行われているPCR検査数は少なくとも100件、多い国では約950件であり、無症状感染者を確実に見つけ出してほぼゼロコロナを達成していることが分かります。多くの収束していない国ではこの数値が50件以下、日本では10~14件程度です。
 昨年の5月に検査・隔離の重要性を指摘してからおよそ10ヶ月がたちました。政府や分科会の会長も、最近はこれまでの路線を変更し、検査によって無症状感染者を見つけ出して隔離することが必要だといっています。この取り組を全国全ての地域で実行しないと、第4波が生じることになりますが、この1週間の感染状況はすでに第4波に入っていることを示しているように見えます。集団免疫やワクチンの早期接種が期待できない今、大きな第4波にしないためには、「夜の会食」だけを制限するのではなく、確実な「社会的距離」を四六時中実践することを求めると共に、東京都はもちろんのこと各自治体で徹底した検査・隔離を実施することが唯一の実効性のある方策だと思います。

nice!(0) 

3.11 10年後 [雑感]

2011年3月11日14.46には、東京電機大学の研究室で、机に向かっていました。初期微動が長く、遠くの強い地震だと思っているところに、突然どんと大きな揺れが始まりました。倒れそうに揺れる本棚の前に飛んでいって、両手を広げて押さえていると、机の上のパソコンのモニターが今にも落ちそうに大きく揺れ出しましたが、足や手を伸ばしても届かないので、本箱を押さえながら落ちないように祈っていました。数分後揺れが収まったときは、3冊くらい本が床に落ちる程度でした。どこかの大きな地震だと思い、すぐ物理実験室に行ってテレビを見ました。ヘリコプターからの映像で、陸に向かっている大きな津波が映されているのを見て、思わず「これはソリトンだ」と同僚に言ったのを思いだします。地震と津波の被害があれほど大きかったことは、その夜まで予想もできませんでしたし、また原子力発電所がメルトダウンや水素爆発を起こすことなど、とても想像できませんでした。夕方訪れたスーパーやホームセンターは普段通り、電池も食料もあると思っていたら、次の日にはほとんど売り切れていてびっくりでした。14日に羽田から福岡に戻ったのですが、最寄りの東武東上線が停止していたので、運行していたリムジンバスを利用しました。15日に埼玉県上空にきた放射性粉塵を避けられたのは幸運でした。今も、亡くなった人、行方不明の人の数だけの悲劇と助かった人の数だけの奇跡を思うとき、胸が詰まります。
この大震災は、大きな課題を人類に突き付けました。エネルギーを原子力に頼る社会のもろさ、虚構に過ぎない安全神話を生み出した科学の責任、この課題に真摯に向き合うことなく進められる復興政策やエネルギー政策。また現在のコロナ禍は、「観光立国」の脆弱さ、すなわち日本が食料も医薬品も日用雑貨など必須のものを自国内で生産できず、観光客や技能労働者が来なければ成り立たない社会であることを露呈しています。この10年間に経験したことを踏まえて、そのような社会の仕組みを根本的に変えて、次の世紀につなぐことが求められていると思います。
すでにお読みいただいているかも知れませんが、少し前に公表しました科学者の責任と新しい社会の仕組みについての論考のリンクを記しておきます。コロナ後の社会を考えるとき、これら二つの視点は極めて重要であると思います。

nice!(0)