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PCR検査の精度について [コロナについて]

論文に対してPCR 検査の精度が100%ではないのによいのか?という疑問が多く寄せられています。陰性なのに陽性となった人は、特に大きな問題になります。誤って隔離された人は、隔離による不便を被るだけでなく、感染させられることもありえます。誤りを防ぐには、精度が高いと言われている方法(唾液法)の採用や抗原検査と組み合わすなどの工夫をして、精度を100%に近づける必要があると思います。

一方、理論上は検査の精度は、隔離率を決める一つの因子として取り込むことは可能です。発症した人を検査する場合、隔離率は[発症率×検査効率×その他の因子]で与えられます。ここで

発症率:ある日の市中感染者がその日に発症する割合

検査効率:発症した人をその日に検査する割合

その他の因子:確率を上げる効果としてクラスター法的検査を採用する、確率を下げる効果としては検査の精度が低いこと、および検査されるまでの待ち時間や判定までの時間など

理論的に言えることは、検査体制を充実して隔離率を上げれば収束が早まることだけですが、それはある意味既に知られていたことです。当然のことですが、隔離者数が増えるわけですから、重症者施設、中・軽症者施設の充実はもとより、自宅待機せざるを得ない人への対策が必要です。各自治体が、仕事が亡くなった人を集めて、食品・生活必需品・日曜雑貨のネット販売業務を支援する仕組みを作る等の対策が必要となります。

SIQRモデルで隔離者数を分離して考え(次のブログ参照)たことにより、全体の傾向から隔離率が見積もれれば、新規感染者数=隔離者数から、市中感染者数が求まることになります。これも当たり前のことですが、その関係は現在使われているように思われません。なお、論文では現在の隔離率は、ウイルスを出さなくなるまでの日数を30日とすると0.1, それを15日とすると0.07になり、市中感染者数はそれぞれ新規感染者数のおよそ10倍、15倍になります。専門家会議のように5日で隔離できているとすると5倍になります。メディアではこの点は全く触れられていません。

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何故隔離者を分けたモデルを考えるか? [コロナについて]

森田 直幸氏から「モデルにQを入れる意義」を問う本質的質問を頂きました。有り難うございました。

これまでのSIRモデルでは(5)式のみを考え、さらに隔離者を治癒者と同じように扱って、隔離率と治癒率を足したものを改めて除去率としたモデルです。専門家会議の資料(4月5日の記者団への説明)によれば、除去率は1/4.8 すなわち、感染者は平均5日で隔離または治癒すると仮定されています。

隔離者を明示的に分け、隔離者の項を分けて考える意義は次の4点です:

(1)隔離は人為的過程だからいわば政策依存であるが、治癒は薬などの別の因子できまる。政策を議論するためには分けておく方が便利である。

(2)治癒率(ウイルスを感染させなくなるまでの期間)はSIQRでは市中感染者のもののみが重要で、それを今の所薬(市販の薬)ではコントロールできない。

(3)現状では、データは日々隔離される人の数だけであり、それを(市中)感染者数と関係づける必要がある。

(4)一つの重要なパラメータは、隔離された感染者の治癒するまでの時間ではなく、(市中)感染者がウイルスをまき散らさなくなるまでの時間である。

以上から、現象を理解しやすくするためにQをいれ、物理モデルとしてSIQRモデルを提案しています。SIRモデルでは、日ごと陽性者の数から感染者全数を見積もるのは困難だと思います。SIQRは、現在は潜伏期間を無視した記憶効果のない平均場近似になっていますが、その導入は容易です。

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