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日本のコロナ感染は何故収束しないのか? [コロナについて]

 緊急事態宣言が延長され、全国の新規感染者数が減少傾向にありますが、最近は下げ止まりの兆候さえ見えます。先に提案しました感染症のSIQRモデルでは、市中感染者 I のある割合 q が隔離されると考えています。日本におけるPCR検査は、一部の自治体を除き、厚生労働省の指示の通りに、感染者に接触可能性のある発症者のみを対象として行われています。つまり発症率をxとすると、隔離される数は 隔離率を q’ として、q’*x*I となり、残りの(1-x)*I の無症状者は見逃されます。感染者の増加率は、接触自粛率を a, 感染確率をβとすると、(1-a)*β です。人々が、感染者数の増加を見て、危ないと感じると自粛率が大きくなり、(1-a)*β<q’*x となって、新規感染者数が減少します。ある程度新規感染者数が減ると、自粛が緩んで、(1-a)*β=q’*x のときに下げ止まり、(1-a)*β>q’*x になるとリバウンドとなります。市中に残される無症状者 (1-x)*I が、常に感染者を増やし続けますので、ある程度の自粛では、感染は収束しません。
  感染を収束させるためには、無症状感染者を検査で見つけ出し、隔離することが重要です。実際5月初旬において、ワクチン接種率が63%のイスラエルと53%のイギリスでは、ワクチンで感染が収束したように見えますが、検査陽性率はそれぞれ0.5%, 0.8% で日本の10倍くらいのPCR検査が行われていることを見逃してはなりません。一方、ワクチン接種率が45~47%もあるのに、検査陽性率が10%前後と検査数の少ないバーレーンやチリでは、新規感染者数がなお増加しているあるいは高止まりしています。なお、イギリスでは5月末から、δ株により感染が再び拡大しています。
 無症状感染者を野放しにしている日本では、ワクチン効果が出るまでにはかなり時間がかかりますから、日本における感染を拡大させ、さらに世界的な感染拡散の起点となるようなオリンピック・パラリンピックは開催すべきではありません。

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汚染水海中放出と脱炭素 [オピニオン]

コロナ禍で人々の関心がコロナに向かっている中で、政府はこの春に二つの見逃す事のできない決定をしました。福島の原発事故後たまり続ける放射性汚染水を海中放出することと、2030年に向けて温室効果ガスの46%(2013年比)削減を行うというものです。
 汚染水は、放射性物質のトリチウム(T)を含んでおり、放出しても良いという根拠として、多くの原発ですでに放出されていること、国際基準以下の濃度に薄めること、自然界に存在することを挙げています。自然界に存在する以上にTを増やした場合、長期的にどのような問題が生じるかという科学的問題は、「科学的に答えることの出来ない」典型的なトランスサイエンスの問題であり、国際基準はその疑問に答えるものではありません。放出される汚染水のTの濃度が問題ではなく、現存する量をどれだけ増すかという量そのものが問題であり、自然界にあるから放出しても良いという事はあり得ません。実際、温室効果ガスは、産業革命以後どんどん放出されるようになりました。当初は「二酸化炭素は自然界にあるから問題ない」と信じられていましたが、100年後の今不可逆的な変化を引き起こすまでになっています。三重水 T2Oは水と同程度には電離し、容易に他のHと置き換わることは否定できませんから、Tが完全除去できるまでは汚染水を放出すべきではありません。
 多くの生物が共存する地球環境は、太陽エネルギーを唯一のエネルギー源として進化してきたものです。その過程で地下に埋蔵された化石燃料を産業革命以後大量に用いるようになったことから温室効果ガス問題が生じています。温室効果ガス削減の取り組は、「脱炭素」ではなく「脱化石燃料」であるべきであり、それは地球環境を太陽が存在する限り、持続させる取り組みでなければなりません。原子力発電は、現代人が抱えた未来への大きな「負の遺産」であり、「脱炭素」の掛け声の裏で、原子力発電が推進されることがあってはなりません。すでに、論考「太陽エネルギー循環社会を目指そう」で指摘していますように、太陽エネルギーは最も効率よく利用されなければなりません。最近、多くの農地や丘陵地でメガソーラーを見かけますが、これらの土地の内多くは、なお植物が育つ場所であり、メガソーラー設置による森林破壊や農地の不毛化は即やめるべきです。少なくとも、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)などでの活用が必須です。太陽エネルギーは、食料、材料となる植物を通して最大限利用されるべきです。

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