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日本学術会議問題の本質 [オピニオン]

 管前首相の会員任命拒否(安倍元首相の方針通り)に始まった日本学術会議問題は、会員以外の委員の入った選考委員会による会員選出を柱とする政府方針が出され、その方向で決着しそうな状況である。しかし、この30年ほどの間に教育・研究現場で経験してきたことや、研究力の衰退の現実をみると、日本が抱える科学/技術/教育/研究の問題の本質が、単に学術会議の会員選考方法ということではなく、1990年代から始まった教育/研究の国による支配を完結させる事にあることが分かる。すなわち、「日銀は政府の子会社だ」という安倍元首相の言い方をすれば「大学・研究所は政府の子会社だ」、「科学者はその従業員だ』という立場を政府が取っていることが、問題の本質である。科学/技術に関する総合的、基本的政策は、平成13年から日本学術会議ではなく、内閣府に置かれた総合科学技術会議(後に総合科学技術イノベーション会議)で決められるようになっている。さらに、国立大学の予算や私学助成の傾斜配分、軍関係の研究費の大幅な増額、キャリアパスが明確でない任期付き教員/研究員の増加などが学問の自由を奪い、また研究者という職業を夢のないものとし、研究者を目指す若者が減少したことにより、日本の研究力の大きな減退を引き起こしている。
 科学者が国民から期待されるのは、政府の方針に従うのではなく、科学的知見に基づき、政府の方針でも批判すべきものは批判することであり、学術に携わる者の組織は直接国民に対して責任を負うものでなければならない。これは、近代の歴史の教える所であり、日本が身を以て学んだことであろう。

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