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コロナに対する本末転倒の議論は看過できない [コロナについて]

全国の新規感染者数が5万人を超え、残念ながら数日前に行った最悪の予測の通り増加しています。そんな中、オミクロン株(変異体)に対応するとして分科会からあるいはその中の専門家と呼ばれている有志から出された提言には、本末転倒あるいは非科学的な方針や現在採られている対策と矛盾するものが多く、岸田首相や知事の方々もかなりとまどっておられるようです。科学的・論理的に考えて看過できないものを以下に指摘します。
[1] オミクロン株は感染力が強いから、「人流抑制」ではなく「人数制限」が大事だという尾身会長の発言は、すでに多くの自治体首長やメデイアが、批判しています。「人流」は外出した人から生じ、外出する人は大部分が公共交通機関を使います。一方、海外から帰国した人は、公共交通機関の利用を禁じられています。オミクロン株は空気伝染が主な伝染経路になっており、混み合った場所では伝染の可能性があるという事を認識すべきではないでしょうか。
[2]「あまり会っていない人と会わない」、「知っている人同士で4人以下の会食にする」という説明がありました。一方、家庭内感染が増えていますが、家族は「全てよく知っている人」であり、4人以下の家族では感染しないという証拠があるのでしょうか?家庭内感染は、ウイルスがそこで湧くわけではなく、外で感染した人が家庭に持ち帰るからであり、外で感染しないことが重要でしょう。ちなみに、厚生労働省では5人ほど以上の集団感染をクラスターと定義しており、「4人以下の会食であればクラスターは発生しないだろう」ということになります。また家庭内の感染はクラスターとは呼ばないと定義されています。
[3]「渋谷の繁華街で感染が広がっていますか?(起こっていないという意味で)」という発言もありました。感染伝播のおよそ半数は無症状者からのものであり、無症状者の行動を把握していなければ、そんな主張はできないでしょう。そもそも分科会は感染経路不明者の感染源をどう考えているのでしょうか?
[4]感染者数が増え、PCR検査が追いつかなくなっていることから、「若い人は重症化しないから検査しない」という提言が分科会有志からでました。最終提言からは除かれたようですが、2年前に言われていたように、分科会は、今なお「PCR検査は重症化しそうな感染者を見つけるため」と考えているようです。諸外国の例を引くまでもなく、検査は有症状、無症状を問わず感染者を見つけ出し、他人に伝染させないことを求めるための手段です。普通の科学者であれば、検査が足りなくなるなら「検査能力を高めることを求める提言」を政府に行うでしょう。濃厚接触者についても、数日間ごとに検査で感染していないことが確認できれば、隔離の必要はないと考えられます。
[5]多くの都道府県で重点措置が発せられ、飲食店の営業時間の短縮が求められています。コロナウイルスは「夜行性」ではなく、いつでも感染します。感染は人と人の接触で起こりますから、陰性証明(ワクチンパスポートではなく)によって店員と客両方の陰性を確認し、万が一のために客の密度を十分小さくする方が科学的に妥当な対策と言えるでしょう。
 発症した人を確実に見つけ出して隔離することはもちろん大切ですが、無症状の感染者をできるだけ多く見つけ出して自宅待機してもらう以外に収束させる方法はないと思います。無料のPCR検査場はかなり設置され、ウェブ上の地図でも見つけられるようになっている自治体が多いですが、長時間待たなくても良いように検査会場を増やすべきです。外出時も、高性能のマスクの確実な着用を求めることも重要です。

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コロナ第6波現状の分析と望まれる対策 [コロナについて]

コロナ第6波の感染は、これまでにない広がりを見せており、またウイルスの特徴がこれまでのものとは異なることから、これまで行われてきた「濃厚接触者」の定義や「行動自粛」の指針は見直す必要があるようです。
japan22-1-18.jpg 左の図は、昨日18日の新規感染者数まで含めた感染状況の分析です。平均的振る舞いを見ていますから、直近の解析には誤差が大きく出ます。1月6日の解析による1月最初の1週間の増加率は0.45となっていましたが、昨日までのデータを含めた解析では0.25程度であり、この1週間はさらに鈍化して0.15程度(倍加日数4.6日)です。しかし、この増加率はこれまでの波に比べると2倍以上大きく、このまま行けば、来週には6万人、再来週には10万人を超えることになります。この状況を見て、多くの人が行動を自粛されて、そこまで増加しないことを望みます。
 重症者が増えていないから問題ないという論調もありますが、これほどまで感染者が増えますと社会の機能が失われ、様々な面で大きな影響が出ます。対策の遅れの原因は、①病床逼迫度で感染状況を判断していること、②ワクチンが感染防御に役立っているという過信、③無症状感染者の数を見積もっていないこと、④検査体制や感染防御対策への対応が不十分であること にあります。①は、保健所が対応できて入院させられた感染者の数で決まっており、感染者急増期には感染状況を反映していません。入院を必要とする感染者(入院調整中の人)の数を含めて、病床逼迫度を定義すべきです。②については、報告される感染者の中でワクチン接種者の占める割合が、ワクチン接種率より少し小さいだけですから、ワクチンが感染する・感染させる事を防いでいるのは、接種後比較的短い期間と言わざるを得ません。③について、最近「感染者の中の感染経路不明者の割合」が余り報告されません。たまたま見た昨日のニュースでは、自治体ごとに異なっていて20%~70%くらいでした。この数値が大きいほど、市中の無症状感染者の数が多くなりますから、注視すべき指標ですが、分科会がなにも触れないのは不思議です。④厚生労働省のホームページによると、PCR検査は385181/日が可能らしいですが、すでに多くの自治体で感染者数が増えて検査が追いついていないということです。それにより、日毎の新規感染者数が小さくなりますから、感染が過小評価されることになります。接触自粛による感染防御も。今なお「会食は4人まで」というような基準が出てくるようでは、現状に対応できているとは言えないでしょう。
 コロナの最大の問題は、無症状感染者が感染を広めること、さらにオミクロン変異体は強い空気感染力をもつことです。有症状者を隔離し、投薬すれば、その感染者の重症化を防げますが、市中の感染者を減らせません。市中にいる無症状者は感染している自覚もないわけですから、薬(開発されたとして)を飲むこともなく、ただ感染を広げるだけになります。社会的機能を維持するためには、検査でできるだけ多くの無症状感染者を見つけ出し、陰性になるまで自宅で待機してもらう以外に方法はないでしょう。感染者の接触者についても、現在の濃厚接触者への対応ではなく、接触した全員を数日間監視し、陽性者のみ自宅待機にすれば良いでしょう。岸田首相が、「ワクチンパスポートを一時的に中止するが、PCR検査陰性証明は有効である」という発言をされましたが、それはワクチンが開発されていなかった2年前の春に何人かの専門家/テレビコメンテーターが言われていたことです。

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オミクロン変異体市中感染者数:テレビ朝日玉川徹氏の宿題への解答 [コロナについて]

1月11日のテレビ朝日モーニングショウで、玉川徹氏から「だれかオミクロン変異体の市中感染者数を見積もれないのか」という発言がありました。感染経路不明者の割合から、市中感染者数を見積もる理論的枠組みはすでに論文(現在査読中)で明らかにしており、2021-8-23のブログでも説明していますが、現在のオミクロン変異体については正確なデータがありませんので精度の高い推定は難しいです。大雑把な見積もりをするために、ニュースなどで聞く数値から推定して、隔離される日を基準にその3日前から感染力を持ち、その後5日間は感染力を持つという仮定をおきます。さらに2022-1-07のブログで示しましたように現在は感染者数が増加率=0.45で増加していることを考慮し、また無症状者の検査/隔離は積極的に行われていないものとします。これらの仮定を置くと、感染経路不明者数の割合が f のとき、市中の無症候感染者数は、日々陽性者数の3.84/(1-f) 倍で与えられます。つまり、f=0.3のとき5.5倍、f=0.5 のとき7.7倍、f=0.7のとき13倍になります。参考にして頂ければ幸いです。

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コロナ第6波突入、対策は?(データ修正1月10日) [コロナについて]

2022年に入って全国的にデルタ変異体、オミクロン変異体が広がり、その増加はこれまでにない驚くべき速さになっています。
Japan2022-1-06s.jpg左図(解析をやり直し、より正確な図にしました)は、日本のこの3ヶ月間の新規感染者数及び2020年4月以後の感染状況図(感染者数増加率を感染者数の関数として示した図=上半面が増加、下半面が減少を表す)です。感染状況図が示すように、感染者数の増加率がこれまでの4~5倍になっており、オミクロン変異体の感染力が強く、今後感染者数の急激な増加が危惧されます。感染者数が2倍になる倍加日数は、0.693を増減率で割った量ですから、増減率が図のように0.45の場合、倍加日数は1.5日(これまでの波では10~14日程度だった)になります。昨年来、ワクチン接種が進み、また経口の治療薬も認可されましたから、これまでの2年間とは違った状況にありますが、ワクチンを過信し、対策がおろそかになりますと、1日10万人以上の感染者がでることも予想されます。
 ワクチン効果については、すでに2021年9月1日のブログで説明しましたように①感染しない効果:予防率a1 ②感染しても他の人にうつさない効果:感染力抑止率a2 ③感染しても発症しない効果:発症抑止率a3  ④発症しても重症化しない効果:重症化抑止率a4 を考える必要があります。新規感染者数の増減率は、β×(1-x)×(1-a1)×(1-a2) ーq ーγ で決まります。βはウイルスの伝播係数でオミクロン変異体では大きくなっています。x は行動自粛率、qはPCR検査によって陽性者を見つけ出して隔離する効果で、γは自然治癒あるいは薬などによる市中感染者の治癒効果を表しています。すなわち、新規感染者数は、ワクチンの最初の二つの効果で決まり、よく耳にする後の二つの効果;発症予防と重症化予防は、入院者数や死者を減ずる効果しかなく、感染伝播を抑える効果ではありません。軽症でも感染者が増えますと、社会機能が麻痺することはイギリスやアメリカですでに見られています。ワクチンの予防・感染抑止効果の持続性に対する正確なデータは公表されていないようですが、接種後かなり速く減少するようで、感染者数を抑えるには、ワクチン頼みではなく、人と人との接触抑制および検査/隔離対策を徹底し、経口治療薬の開発を急ぐ事が重要です。また、ワクチンについても感染しない/させない効果を長期間保ち、かつ色々な変異体にも有効なワクチンの開発が望まれます。
 昨年秋までの1年半に比べ、岸田政権はかなり迅速な対応を目指していますが、対策が分科会が決めた「新規感染者数」と「医療体制の逼迫度」に基づいて考えられており、新規感染者数拡大を防ぐ対策としては後手になっています。上の感染状況図で言えば、左端の急激に上に上がっている線が、正の領域に入ったところが第6波への突入を表しますから、12月中旬に日毎感染者数が前週より増加した日が1週間以上続いた段階で、すなわち増加率が増加しだしているところで強い対策を出すべきでした。9日からの一部領域を対象とした「まん延防止等重点措置」の対策では、2~3週間遅れたと言わざるを得ません。

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謹賀新年 [挨拶]

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
2022年1月1日
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