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民主主義の崩壊と学問の自由 [オピニオン]

 歴史的に見ると、多くの国で市民革命により君主が国を支配する封建制から国民が主権を持つ民主主義国家に変わり、理想的には選挙で選ばれた国会議員が国の方針を決め、それに基づいて行政府が政策を実行することになっている。この民主主義国家は、軍によるクーデターだけでなく、1人の人間が国会の議論を通して権力を自分に集中させる仕組みを作り上げ、皇帝のごとき絶対的支配者になることによって崩壊する。第2次世界大戦前のドイツのヒトラーは民主的手続きによって権力を掌握し、近年のロシアや共産主義国家でも独裁者が台頭している。
 民主主義の根幹は、言論の自由と国民の知る権利である。この10年ほどの間、行政府の長は国会での議論ではなく、自分のお気に入りの専門家を集めた諮問会議で政策を決め、さらに私(個人、知人、党)利のための政策ばかりを行ってきた。また、”議論を避ける”、”嘘の答弁をする”、“予備費を増やす”など国権の中心であるべき国会を無視し、忖度がはびこり、都合の悪いデータの改ざんが行われるような行政組織に変えられてきた。
 教育や研究に対しても、国会での議論ではなく、教育に関しては教育再生会議や教育再生実行会議、研究に関しては総合科学技術イノベーション会議(前総合科学技術会議)で、方針が決められている。行政の長への権力の集中は民主主義の崩壊の始まりであり、学問の自由を脅かすものである。
 民主主義の破壊を先導してきた人物をたたえることは、その破壊をさらに拡大することになろう。

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