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新型コロナの対策の考え方の説明 [コロナについて]

研究をテレビでも紹介してもらい、メールなどで市民の方からも色々と質問が寄せられ、大変参考になっています。本来ブログへのコメントを可能にすれば良いのですが、対応できない失礼を避けるために、申し訳ありませんが現在の設定にしております。

最近色々なメディアと接触していて、各局の立場がよく分かります。アンデルセン童話「裸の王様」を見ているようです。政府および政府がその科学的根拠としている専門家会議に異を唱える意見(としか見られていませんが、科学的真理です)ですから、及び腰になる(裸だと言えない)のでしょう。まず新聞は紙面では取り上げないですが、取り上げて頂いた朝日新聞電子版には敬意を表します。今のところ恐れずに紹介してくれているのはABCやTBS系のニュースショウが多いです。地元のテレビ局は、取材に来てニュースで紹介してくれたところもあります。

政府も専門家会議から詳しい説明を受けておられたものと思いますが、感染症の蔓延対策は、子供でも分かる簡単なことです。それを説明しておきます。記号を使う方が説明しやすいので少し使います。

A:毎日市内で発生しているであろう、新規感染者

B:毎日の、発症が確認されて、隔離される感染者、治る感染者(病院で治る人、市中で治る人)、亡くなる方

AがBより大きいと感染が拡大し、AがBより小さいと感染は収束します。AとBの大きさの比較が大事だということは、誰も反対しません。AとBの大きさを比較する場合、単にAとBのそれぞれの大きさを見れば良いのですが、A-Bが正か負で判断できますし、A/Bの比が1より大きいか、小さいかでも判断できます。四則演算で分かり易いのは加減で、不得手とする人が多いのは乗除でしょう。割り算を暗算でするのが大変なように、比で大きさを比較する場合、分母、分子で共通の因子は消えますので、注意が必要になることもあります。

さてAは、ウイルスの感染力、未感染者の数、市中にいる感染者の数、未感染者と感染者の接触頻度で決まります。それを小さくする方法としては、ワクチンの開発、未感染者の数を減らす、市中にいる感染者の数を減らす、接触頻度を減らすことが考えられます。

一方、Bを大きくするためには、症状の出た人は、厳しい「目安」を付けずに、さらにその接触者の症状の出ていない人も含めて検査し、感染者をできるだけ多く隔離すること、市中の感染者ができるだけ速く感染力をなくすようにすることになります。今開発が努力されている治療薬は、隔離感染者を速く治し、死亡者も減らそうという努力になり、また、仮にかかったときの安心感にもなりますので、大切なのですが、市中の感染者には投与できません。

ここで、このブログの読者に質問です。自分が首相になって、「AをBより小さくする政策を考える」ことになったら、どういう政策を採りますか?。。。。。。答えを考えてから、続きを読んで下さい。

政府が採った政策は、PCR検査/隔離は死者をできるだけ減らすために重症者を見つけ出す手段と考え、接触頻度を市民の協力で8割削減し、Aを小さくするものでした。

スウェーデンでは、感染症が蔓延して、抗体を持つ人が増え、未感染者が減ることによるAの減少を待つという政策が採られています。その状態になるまでは1年位はかかると思いますが、その間に亡くなる方はやむを得ないという考え方のようです。

私の提案は、PCR検査/隔離は、市中の感染源を減らすためにやり、そうすればBを大きくできるというものです。

ブログの読者の政策はどうだったでしょうか?

比をとって考える際に、重要となるのは、時間の単位をどうするかです。例えば、1秒を単位にするのか1時間にするのか1日にするのかを迷います。普通理論的解析では、現象に固有の時間を単位として用います。従来の感染症の理論では、治癒するまでの日数を単位として理論が組み立てられています。私が学生を指導していたときも、常に何を単位するか考えさせました。一方、単位を消去して得た結果を実際の予測などに当てはめるときは、実際の時間に戻す必要があり、そこで混乱するととんでもない結論が出てしまいます。学生の研究結果をチェックするときは最初に見るところです。

安倍首相が、宣言解除の条件の一つとして、「新規感染者の数が退院者の数を下回れば良い」と記者会見で言われていました。今分かるのは、市中の新規感染者(Aの中の)ではなく、日ごと陽性者数=隔離数(Bの中の)のはずですから、安倍首相の条件は病院の空きベッドの数が増えれば感染が収束に向かっているという判断になります。市中の無症状感染者が問題なのにそれでいいのかと不安になるのは私だけではないはずです。

市民の方も何となくおかしいと気づかれているようですが、どこがおかしいか言えないもどかしさがあると思います。この説明が、市民の方々がコロナ問題を考えられるときの参考になれば幸いです。

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